あまりにも有名、しかし意外と読んだことない人も多い。おそらくそれが村上春樹。
・名前は知ってるけど読んだことない
という人にむけて書きました。
僕が今ブログ続けているのは、間違いなく村上春樹がいたから。「文章を書く」という行為があまりにもクールだと思わせてくれたのが村上春樹なのです。
独特な比喩表現。ついつい読んでしまうテンポ感のある文章。大人が読むに耐えうるファンタジー。ここが村上春樹の持ち味です。
読むたびに発見がある。明確なオチがない場合もある。しかしそれが良い。同時代に生きて新作を読める喜びを噛み締めるべき。
僕は村上春樹が好きなんだ、やれやれ
村上春樹との出会いは高校生の時
出会いは高校生の時だった。その当時に発売された村上春樹の「1Q84」を、母が図書館から借りてきた。
それまでの僕はハリーポッターは全部読んだことはあるってレベル。あとはマンガばっかり。本は読めるけど、そこまで主体的に読んでないという状況だった。
長編の日本の小説を初めて読んだのが、おそらく「1Q84」。文庫本にして6冊分のボリューム。
これが最初に読んだ時の感覚。読書経験がそこまであったわけではないのに、ついつい全て読んでしまった。
中学校の時に初めてドラゴンボールを読んだ時の衝撃に近かった。「この作品ってめっちゃスゴいんじゃないの?」って感覚が、読んでる間はずっと消えない。
初めて読んだ時は女性の裸も見たことなかったから、性描写で「うーん、むむむ」ってなったのはめっちゃ覚えてる。
ただ高校生で人生経験もまだ足りず、あの時は完全に没入はできていなかったと思う。20代後半に買い揃えて読んだ時の方が、時間を忘れて読むことができた。
受験期に入ったこともあり、高校時代はそれ以上に村上春樹の作品を読むことはなかった。お金もなかったし、小説を買うのをケチってたってのもあるけど。
その後大学生になり、必修単位を落としてあえなく留年。他の単位は取れていたこともあり、超ヒマになる。
ってノリで、本格的に読書を開始。はい、ここで久しぶりに村上春樹を読む。
大好きなイギリスのバンドRadioheadのボーカルであるトム・ヨークが、「ねじまき鳥クロニクル」を読んでいたと語ったインタビューを見た。たまらず購入。
あの時に留年していなかったら。トム・ヨークのインタビューを読んでいなかったら。僕は村上春樹を読んでいないかも。あの日、あの時、あの場所で、小田和正のテンション。
ここから僕は村上春樹に激ハマりする。村上春樹は20歳を超えてから読むのが一番面白い。高校生ではまだ早いかも。
20歳を超えて、ある程度の人生経験、ある程度の語彙がある。加えて日々の中で、一人孤独に内省をしてる。こんな人は村上春樹読んでみな、飛ぶぞ。
村上春樹はある種の古典芸能
ない。ミステリーとかじゃない。ジャンル分けするなら、ファンタジーになると思う。
長編小説は全部読んだから分かる。村上春樹はある種の古典芸能。全部違う話ではあるんだけど、似通った部分がかなり多い。
- 女性がいなくなる
妻や彼女など意中の女性が急に消失する - 謎の女性が出てくる
いなくなった女性を探す手がかりをくれる - どこかに必ずネコが出てくる
- 普通の日常が繰り返されるけど、少し非日常が出てきてファンタジーになる
- 主人公は必ず内省的な男
読書好きな孤独な男、陽キャの確率0%
特に上のポイントはほぼ全ての作品で共通してる。
村上春樹作品を初めて読む人は、突拍子もない展開や、めくるめく伏線回収を期待してはいけない。そういうジャンキーな作品じゃない。
主人公の平穏で現実的な日常が、少しずつ幻想味を帯びてくる。そういった静謐な世界観に堪能するものなんですね。部屋でジャズをかけて、コーヒー片手に一人でじっくり読むのがベスト。
村上春樹のスゴさとは
大人が読むに耐えるファンタジー
丁寧な日常から、徐々に微ファンタジーへ
と思われた方、結構いると思う。名前は有名だけど、読んだことないって人は多いはず。学校の教科書には載ってないしね。
音楽で言えばローリング・ストーンズみたいな感じなのかな。名前知ってる。ロゴ知ってる、ベロだよね。でも聴いたことない人は多い。
村上春樹は大人が読める、というか大人こそ読むべきファンタジー。ここが一番の魅力だと思う。
多くのファンタジー作品は、ターゲット層は若者だったり子供。しかし村上春樹だけは、大人に特化したファンタジー作品。汎用大人型決戦兵器。
丁寧な日常が続き、少しづつ変容していく。身近な女性などの重要なものが急に消えて、大きく話が動き出す。ここからちょっとだけ現実を超えた出来事が起こってくる。
激しい熱意も持たず、どこか冷めて斜に構えている主人公が、喪失を埋めるために必死になる。細部は全然違うけど、話の背骨は毎回こんな感じ。
ハルキストと日常描写
月並みな表現になってしまうけど、村上春樹の作品は「世界観」を楽しむもの。
個人的な好みになるけど、村上春樹の生活描写はずっと読める。ここらへんは完全に癖の領域。
主人公の穏やかだけど、規則のある生活を細々と書いていて、これがめちゃくちゃ気持ち良い。このシーンだけを抜粋して、誰か本にしてほしい。
実際に村上春樹もインタビューで、規則正しく秩序ある生活を心がけていると述べてる。全然知らない人のルーティン動画を見るくらいなら、村上春樹を読んで。
- 洗濯
- アイロンがけ
- 料理、食品の買い物
- 読書
- 掃除
- 音楽をじっくり聴く
- ランニング
- 水泳
主人公は主に上の活動を、日常生活でしている。全くせかせかしていない。スマホをいじることもないし、ネットサーフィンもしない。
好きな音楽をかけて、ゆっくり小説を読む。自分で料理をして、スマホなんか見ないで、しっかりと味わう。そして孤独。
村上春樹のファンは、総称して「ハルキスト」と呼ばれてる。ももクロでいうところの「モノノフ」みたいな感じ。
ハルキストは作品の主人公のライフスタイルもマネしている人も多い。僕もそうなんだけど、自分の行動にまで影響を受けてしまってる。
好きな芸能人が着ている服と同じものを着たくなるように、登場人物と同じ生活をしたくなる。抗いがたい中毒性がある。
自己啓発本を読むよりも、村上春樹を読む方が毎日の質は上がると思う。
日本語としての妙がある
優れた文章には、優れたリズムがある
村上春樹を語る上で、最も素晴らしいのは文体。とにかく文体。文字を読むテンポ。
ある。あるんだな、これが。読んだら分かる。文字が踊ってる。文章がグルーブしてるんだから。
村上春樹のエッセイ「職業としての小説家」で、以下のように書いているんですね。
かっけぇ。なんだよ、これ。パンチラインすぎるって。僕がブログで文章を書く際の、座右の銘でもあるんです。
この言葉を体現しているのが、村上春樹の小説たち。大きなことは起こっていない。些細な事件ばかり。しかし読める。というか読んでしまう。
これは完全に村上春樹の文章が秘めているリズムに他ならない。ここは読んでみないことには分からない。是非読んでみてほしい。
例えとメタファーのスゴさ
村上春樹の特徴は数多くあれど、僕が好きなものの必要が例え。比喩表現だったりメタファー。
村上春樹はとにかく例えが面白い。ここに妙味がある。例えのない村上春樹など村上春樹ではない。
韻を踏まないラッパーと同じ。ちなみに、今僕は例えましたよ。
はい、ここでクイズ!
男性が娘の額にキスをします。この時に村上春樹は、娘がキスを受け入れる様を、どのように例えたでしょうか?
考えてみてください。あなたならどのように例えますか?
他にも素晴らしい例えが随所に出てきます。ここに着目して読んでも楽しめる。
村上春樹のベスト例え
- 悪魔の汗みたいに濃いエスプレッソコーヒー
- 線を切られてしまった電話機のような完璧な沈黙
- まるで世界中の冷蔵庫のドアが一度に開け放たれたみたいな冷たい反応
トレビアン。素晴らしい。こんなふうに例えたいもんです。
ここから18禁の、下ネタの例え。主人公の股間が元気バキバキになった時の例え。実はこの例えが個人的には一番好き。
「謝肉祭の季節を迎えたピサの斜塔みたいに前向きで、しっかりとした勃◯」、いや、シビれる。先生、一生ついてきます。
ちなみに過去に村上春樹に影響受けすぎて、例えで一記事書きました。良かったら読んでみてくださいね。
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比喩表現と例えが上手い人が、会話を制す。物事を例えれば、説明力は劇的に増す。
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文章を書く人は、必ず村上春樹を読め
村上春樹はローリング・ストーンズである
さっきも村上春樹はローリング・ストーンズだって書いた。めちゃくちゃ有名だけど、意外と聴いたことない人もいるって意味で。
しかし他にも共通点がある。いまだにトップなんです。2021年のライブ収益、世界一はローリング・ストーンズ。ぶっちぎり。
常にそのジャンルの頂点に君臨してる。村上春樹だってそう。新作を書けば、書店に所狭しと並ぶ。ブランクなんか関係ない。絶対王者。
かくいう僕も文章を書くモチベーションのひとつは村上春樹。村上春樹のような文章を書いてみたい。この思いがずっとある。
ぶっちゃけブログはもうオワコン。動画コンテンツや音声コンテンツの方が稼げる。文章で金を産むなんて非効率だし、コスパは悪い。
でもなぜ僕は書き続けているのか。そう、村上春樹がいるから。僕の師匠がいまだに文章を書き続けているから。弟子が師匠よりも先に音を上げるなんて、失礼にも程がある。
NBAを見てバスケを始める少年のように、ワールドカップを見てサッカーボールを蹴ってみる子供のように、僕は村上春樹に憧れて文章を書いてる。
僕にとって村上春樹は、マイケル・ジョーダンであり、レブロン・ジェームズ。もしくはリオネル・メッシか、クリスティアーノ・ロナウド。
日本語をもっと自由自在に操りたい。他のことを忘れさせて、ついつい読んでしまう。そんな蠱惑的な文章を書けるようになりたい。
村上春樹から文章を学べ
文章を書く人は、全て村上春樹を読んだ方が良い。いまだに世界一のプレーヤーだから。
期間限定サイト「村上さんのところ」上で、村上春樹になんでも質問できるってイベントがありました。なんと閲覧数1億PVにまで及んだそうな。
そんな中で特に面白かったQ&Aをまとめた「村上さんのところ」。ここで文章を書くための秘訣に関して、村上春樹が質問を受けていました。
これが回答、なるほど。他者目線ってやつね。
えっと、どうですか?僕の文章、ちゃんと読めますか?読みやすいですか?
手は目よりも肥えることはない。目が肥えてから技術が追いつく。スポーツでも、芸術でも、もちろん文章でも。
村上春樹を読んだら目が肥える。間違いなく肥える。ドキュメンタリーとかで見る、「え、健康に害は出ないの?」って心配してしまうアメリカ人くらい肥える。
そして村上春樹は、マイルールに則って、規則正しく文章を書いている。
村上春樹のルール
長編小説を書く場合、一日に400字詰原稿用紙にして、10枚見当で原稿を書いていくことをルールとしています。もっと書きたくても10枚くらいでやめておくし、今日は今ひとつ乗らないなと思っても、なんとかがんばって10枚は書きます。なぜなら長い仕事をするときには、規則性が大切な意味を持ってくるからです。書けるときは勢いでたくさん書いちゃう、書けないときは休むというのでは、規則性は生まれません。(「職業としての小説家」より)
キングが毎日文章を書いてる。僕らが書かなくていいわけがない。曲がりなりにも、文章で金を稼ぎたいなら、毎日書く。もうこれしかない。
村上春樹でまず読むべき作品
村上春樹の長編小説は全部で13作品
と思った方も多いはず。短編集も多いし、翻訳している作品も数ある。なのでとりあえず長編小説に的を絞って読んでみてほしい。
村上春樹の長編小説
- 風の歌を聴け(1979年)
- 1973年のピンボール(1980年)
- 羊をめぐる冒険(1982年)
- 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(1985年)
- ノルウェイの森(1987年)
- ダンス・ダンス・ダンス(1988年)
- 国境の南、太陽の西(1992年)
- ねじまき鳥クロニクル(1994年)
- 海辺のカフカ(2002年)
- 1Q84(2009年)
- 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(2013年)
- 騎士団長殺し(2017年)
- 街と、その不確かな壁(2023年)
僕は全部読んだ。全部良い。それぞれの作品に傑出した個性がある。もし余裕があるなら、13作品全て読んでみてほしい。
ただこれではあまりに不親切なので、3作品に絞りますね。文章を書く極意は、なんと言っても親切心ですから。
ノルウェイの森
一番読みやすい、そして一番有名。それが「ノルウェイの森」。ベタっちゃベタだけど。
村上春樹の代名詞的な作品。キムタクのドラマで言えば、「ロングバケーション」ってところ。基本的には高視聴率だけど、代表はこれだよねって感じ。
全世界でもなんと1,000万部も売れたらしい。英語、フランス語、ドイツ語からセルビア語、カタロニア語など馴染みのない言語にまで翻訳されてる。
そしてこの小説の一番のおすすめポイントとしては、リアリティーがあること。ファンタジー要素はほぼない。
村上春樹の世界観に慣れていない人は、まずここから入ると違和感なくその後に進める。発売当時は「100%の恋愛小説」なんてキャッチコピーもついてた。
村上春樹の自伝小説の一面も強く、ディテールも細かい。主人公は大学生だけど、大人になってから読んでも楽しめる。
個人的な所感だけど、村上春樹の要素の一つである「喪失」を味わえる。
海辺のカフカ
むちゃくちゃ悩んだけど、おすすめの二つ目は「海辺のカフカ」。
リアリティーとファンタジーのバランスが非常に良い。2006年の「世界幻想文学大賞」を受賞し、国際的な評価が高まるきっかけになった記念碑的な作品でもある。
舞台は四国。関西の大学生が免許をとったら、調子に乗ってレンタカーを借りて、ドライブしに行くあの四国。ちなみに淡路島にも必ず立ち寄る。これはあるある。
他の作品も全て素晴らしいけど、なぜ「海辺のカフカ」を僕は選んだのか?ここはもう完全に思い入れの世界。
主人公は中学3年生の少年。東京中野区の家から、いろいろな事情があり、深夜バスで四国へ。荷物は最小限でリュックひとつ。
前職のブラック企業の社会人2年目に初めて「海辺のカフカ」に出会った。
当時こんな心境だった僕に、「海辺のカフカ」はぶっ刺さった。日常的にしがらみを感じている人は、読んだらハマるしかないと思う。
他にも語ることはいっぱいあるし、触れることも多い小説だけど、あえてこの辺で。
街と、その不確かな壁
最新作。やはり村上春樹は最新作は読むべき。読んだ直後の僕の感想、
村上春樹の作品の要素は全部出てくる。そして全てアップデートされてる。ここにきて、作家としての全盛期を迎えてる。
実はこの「街と、その不確かな壁」は、過去にあった作品。1980年に書かれたんだけど、どこにも収録されていない幻の作品だったんです。
ただこの作品の根本のテーマはずっと村上春樹は持ち続けていて、同テーマで新しい小説を書きました。それが1985年の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」。
この「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はめちゃくちゃ面白いし、完成度も高い。ここで一旦一区切りがつきました。
しかし村上春樹の中からイメージは消えておらず、そのテーマを今の作家としての力量で新たに作り上げたのが、この「街と、その不確かな壁」。
つまり村上春樹が1980年からずっと温めていたアイデアを、40年越しに結晶化させたんですね。まさに作家人生の集大成。
あらすじを調べるとか、そんなのいらない。とにかく読むべき。世界でもトップをひた走る職業作家。そのエッセンスが詰まった作品、読んで損するわけがない。
そして最後に。
村上春樹はもう70歳も半ばに差しかかってる。余生を楽しむには、十分すぎるお金もあるはず。でも僕は信じてる。きっと数年後に、また新作が出る。
喜劇王チャールズ・チャップリンは、「これまでの最高傑作は?」と聞かれた際に、「The next one(次の作品さ)」と答えた。
村上春樹も同じ。最新作が一番凄まじい。そして次の作品は、きっと「街と、その不確かな壁」を凌駕してくる。
僕らが今できることは、これまでの村上春樹の作品を読むことしかない。神の啓示を待つ敬虔なクリスチャンが聖書を読むように、僕らも新作を待ちこれまでの作品を読む。
The latest one(最新作)は最高だった。でもThe next one(次の作品)はきっともっと最高だ。
まとめ
では、最後にこの記事をまとめます。
この記事のまとめ
- 村上春樹は大人が読むべき、最強のファンタジーである
- 日本語で文章を書いて金を稼ぎたい人は、村上春樹をとにかく読むべき
- 「街と、その不確かな壁」は最高傑作、でもきっと次の作品はそれを超えてくる
サラリーマン生活をより豊かにするための情報に特化し、ブログの記事を投稿しています。会社員をしながら、毎日少しづつ書き溜めております。
この記事が面白ければ、是非他の記事も読んでいって下さい。貴重な時間を頂きありがとうございました。ではでは!