世界は、言葉で、素因数分解できる。そしてありがたいことに、僕らは言葉を使える。読める、書ける。
当たり前じゃない。中世のヨーロッパなんて、識字率は5%以下だったんだから。
・語彙力がないけど、特に問題意識を感じていない
という人にむけて書きました。
世界は言葉で素因数分解できる
言葉と文字の奥深さを噛み締めてほしい
人類の持つ最高の発明ってなんでしょうか。火。活版印刷術、火薬、羅針盤。カラーテレビ、クーラー、冷蔵庫。他にも色々出てきそう。
アインシュタインの「人類最高の発明は複利である」なんて発言も有名です。僕はスニーカー好きなんで、スニーカーも最高の発明かもしれません。
しかしあえて極端なポジションをとると、人類の最高の発明は、言葉であり文字だと思うんです。ホモ・サピエンスが生み出した叡智の結晶、発明の極北。言葉、文字。
新約聖書の中に書かれていることには、「はじめに言葉ありき」。うん、魅力的、超トリッキー。
分かる。そうですよね。しかし言葉というものは、桁外れな破壊力を備えているのです。
人を人にしてくれるのは、言葉だけである
言葉の効用は、意思疎通に留まらない
言葉の持つ効用の最たるもの、それは「概念」を生み出せることです。僕の偏見ばりばりの一意見ですので、反論はお受けしません。ごめんあそばせ。
意思疎通を図れるのももちろん大きなメリットです。しかしそれは人間にとどまらず、動物でも可能。
動物同士でもコミュニケーションをとっています。またオーストラリアでは、人ともコミュニケーションをとることができる鳥類がいるのだそう。
ハチの巣を見つけると、人間に知らせにくるそうで、人間がそのハチを駆除するのをサポートするのだとか。自然界、おもれぇ。
情報伝達という意味では、人間に限らず、様々な生物はすでに実施できているんですね。では何が違うのか。
はい、概念。Yes、Concept。パソコンに 今繋いでる コンセント(ちょっと字余り)。
「概念」を作れるのは、言葉だけ
思春期に好きな人ができた。困った、授業に身が入らない。四六時中、いやもはや五七時中、その人のことを考えている。
食事も喉を通らない。ずっと気もそぞろ。まるで自分が自分でなくなってしまったみたい。自分はおかしくなってしまったのか、不安でいっぱいになってしまう。
ここで僕がこんな言葉をかけたとします。
するとどうなるでしょうか。「あ、この状態には、そんな名前がついているんだ」と思うはず。
つまり捉えどころのなかったものが、名前がつくことで急に手触りが生まれるんですね。言葉にするだけで、僕らの対応できるレベルに引きずり下ろせる。
真偽のほどは定かではありませんが、花粉症が生まれたのは、花粉症の薬が先に生まれたからなんて話もあります。
花粉症の薬が売られているのを見て、「花粉症という症状があるのか」と知る。概念を知ったことで、自分も発症してしまったという流れ。
自分がまさに苦しんでいること、悩んでいること、名前をつけるだけで、クリアできるようになる。漠然としていた悩みが、具体的な問題に置き換わる。
名前をつけてみたら、「ブラック企業」なのかもしれない。「職場の同調圧力」なのか「やりがい搾取」なのか、概念に変わる。
概念になると、対策が分かる。同じように悩んでいた人からヒントがもらえるかもしれない。「転職してみたら解決できるかも」と行動を起こせるかもしれない。
僕らはこの世界は、僕らの思考で知覚している。そして思考は、畢竟、言葉。つまり僕らは、僕らの持つ言葉で、この世界を、捉えられる一口サイズに切り分けながら生きている。
世界を、現実を、この今を、僕らは無意識のうちに言葉で素因数分解しながら、生きている。
文字の持つ可能性は無限大
文字が読める、これは奇跡
マンガ「チ。-地球の運動について-」
僕が好きなマンガのひとつ「チ。-地球の運動について-」。あらすじをざっくり書くと、 15世紀のヨーロッパが舞台で、絶対的に正しいとされていた天動説に異を唱え、地動説を信じるようになっていく人々の生涯を描く作品。
当時は今よりも宗教はガチガチで、「天動説?のんのん、地動説しか勝たん♡」なんて言った日には、即極刑。
そんな行き過ぎたコンプラ社会で、地動説を世代を経て、完成させていくという話。面白いのは主人公が何度も変わるってこと。
地動説を研究する、見つかり処刑。しかし手がかりを残し、別の時代の、別の人が見つけて、その志を継承し探究を続ける。この繰り返し。
会ったこともないし、縁もゆかりもない。しかし「地動説が正しい」という信念だけでつながっていて、バトンを受け継ぎ、そしてそのバトンを次世代の顔も知らない同志に託す。アツい、熱い。
文字は、まるで奇跡ですよ
「チ。-地球の運動について-」の中で、僕が非常に好きなシーンがある。それは学識豊かな女性に、徐々に学問の世界にのめり込むことになる肉体派のキャラが、質問するというシーン。
「文字が読めるってどんな感じなんですか?」というシンプルな質問。この当時は文字が読める、ましてや書けるなんて人物は、一握りも一握り。
「文字は、まるで奇跡ですよ。」、答える。文字は時間と時を超越する。200年前の情報に涙を流すことができる。1,000年前のゴシップに笑うことだってある。
僕らはどうしようもなく、この時代、この空間に閉じ込められている。しかし文字を読むだけで、僕らはどの時代にも、飛び立つことができる。
鬱屈としていた新入社員時代。僕以上に鬱屈として、退廃的な世界観を描いた太宰治の小説に救われた。太宰の享年は1948年。僕が生まれるよりも50年近くも昔。
そう考えたら、太宰が僕を救ってくれたのは、奇跡なのかもしれない。文字がなければなしえなかった。
「三体」という小説を引き合いにだしたい。その小説の中で、宇宙が滅びるまでの数百億年先まで、情報を残したいというシーンがある。
舞台ははるかに未来で、テクノロジーの進化も凄まじい。しかしネットに情報を残しても永遠ではない。磁気データもいずれ朽ちる。
数百億年もの途方もない期間、どうやって僕らは情報を残すのか。この中で出た解決策はシンプル。大きな石板に、文字を彫る。あまりにアナログ、あまりにシンプル。
しかしこれが最強。音声データでも、動画でもない。文字。結局は文字が一番、時代を越える。
言葉を残すのは、重い行為なのだ
同じく「チ。-地球の運動について-」の話。先ほどの徐々に学問の世界にのめり込むことになる肉体派のキャラ、ここから文字を勉強をスタート。
そして地動説を研究する日々の日記を書き始める。ちなみに中世のヨーロッパの識字率は、脅威の5%以下。今では考えづらい。
ただ文字を勉強する彼に注意をする賢人がいます。
大半の人間が言葉を読み書きできないのは良いことである。文字というのは特殊な技能であり、言葉を残すのは重い行為。
扱うには一定の資質と最低限の教養が要求されるべきものだ。誰もが簡単に文字を使えたら、ゴミのような情報が溢れかえってしまう。こんな主張です。
僕も人のことは言えませんが、確かに言ってることも分かる。今ではみんながみんな文字を読めるし書ける。おまけにSNSなどで、不特定多数にすぐに発信できる。
そのせいでデマが広がったり、なんとも言えないネットニュースもごまんとある。しかしそれでも、文字を読む、ましてや書ける幸せを今一度享受したい。
中世のヨーロッパで文字の読み書きができる人なんて本当に一握り。金持ち貴族の有閑趣味。
だけど現代の日本では、よっぽどのことがない限りは、読み書きはできる。文字をある程度は自由に操縦し、乗りこなすことができる。言語、もはや、現代の、トレンド。
今日感じた違和感を、誰かに発信できる。10年後の目標を、10年間忘れないように、メモしておける。
当たり前だけど、歴史的にみたら、当たり前じゃない。僕らは言葉を残すことができる。僕らの言葉を、残すことが、できるんだ。
言語化力スキルが僕らを救ってくれる
言語化力があれば無敵
ストレスの多い複雑に入り組んだ現代社会、サバイバルするためには、言語化力が欠かせない。
概念のところでも書いたけど、言語化できると、悩みを解決できるようになる。というか対策が立てられる。
言語化できないと、マジで地獄。考えてもみようぜ。ずっとモヤモヤしてるまま。でもそれを表現できない。
だから消えることはない。何に対して、どんな感情を抱いているのか、どんな受け止めをしているのか、分からないままだから先に進めない。
気分転換をしてみるけど、根本的な解決には至らない。関係のない時間まで、ずっと悩みが頭の中を、鈴鹿サーキットみたいに駆け巡ってる。詰むわ、そんなん、さよなら天さん状態。
と悩んでいる人がいるとします。確かにストレスを感じるだろうけど、これ以上は進みづらい。
また一方で、こんな感じで悩んでいる人がいるとします。
どうでしょうか。こちらの方が、解決できそうな気がしませんか?具体的に言語化すると、対策案も立てられる。
言語化力を上げるためにすべきこと
言語化力を上げるためにできることは意外とシンプル。
言語化力を上げるためにすべきこと
- 語彙力をつける
言語化しようにも材料がないと、表現できない - 小説やドラマや映画などのコンテンツを見まくる
登場キャラクターのサンプルを増やして、「あの時の〇〇と同じ」と言えるようにする - 関係性を整理するクセをつける
悩みを、時系列順、もしくは因果関係順に、具体的に言葉にしていく - 例えてみる
似たパターンや構造を理解しないと例えられない、例えることで客観的に把握できる
上司に理不尽なことを言われまくる。そこで「ドラマの半沢直樹で、融資のミスを擦りつけられたみたいだ」と例えてみる。
誰かと揉めてしまい、にっちもさっちもいかなくなったとする。「まずあの人が遅刻してきて、だから自分が批判して、するとあの人が前の自分のミスを引っ張り出してきて、・・・」というようにプロセスを言葉にしてみる。
色々書きましたが、大事なのは、一にも二にも具体化です。とにかく具体的に、自分の考えを言葉にする。これだけで自分を俯瞰で見ることができるようになります。
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言葉と共に生きていく
僕は愛国者ってわけではまるでないんですが、日本語は好きです。とても美しく、豊潤な言語だと思ってる。
日本語を読む。日本語で文章を書いて、誰かに読んでもらう。なんとも恵まれてる。
夏目漱石を、太宰治を、村上春樹を、彼らの母国語で読める。ひらがな、カタカナ、漢字、alphabet(アルファベット)、使える種類も多い。こんな総合格闘技さながらの言語を、意のままに操れる。
ただ思うことには、僕らの語彙はどんどん貧困になっている気がするんですね。
ろくすっぽ考えずに使える。手軽に選べる。そんなファーストフードな語彙で溢れている。
僕らは今一度、日本語に敬意を払うべきなのかもしれない。日本語の持つ表現の可能性や、描き出すことのできる世界観に目を向けるべきかもしれない。
英会話って難しいと思われがちですが、実はそうでもないらしい。僕は話せないけど。
日常会話で主に使われる英単語は、おおよそ2000語。つまりこの頻出2000語さえ押さえておけば、会話ができる。
素晴らしい話ですが、これと同じことを、母国語でもやってしまってないかというのが怖いところ。
「にほんごであそぼ」って教育番組があるけど、このマインドを大人になっても持ち続けたい。
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まとめ
では、最後にこの記事をまとめます。
この記事のまとめ
- 僕らが言葉を使えるのは、まさに奇跡である
- 言語化するために、時系列順や、因果関係順に、とにかく具体的に言葉にする
- 日本語しか使えないのなら、日本語をとことん極めよう
サラリーマン生活をより豊かにするための情報に特化し、ブログの記事を投稿しています。会社員をしながら、毎日少しづつ書き溜めております。
この記事が面白ければ、是非他の記事も読んでいって下さい。貴重な時間を頂きありがとうございました。ではでは!