日本のヒップホップシーンで、最もアーティストと言えるのは誰か?僕は「THA BLUE HARB(ブルーハーブ)」じゃないかと思っています。長い期間をかけて濃厚なアルバムをリリース、そして1年近くかけて全国でのライブツアー。そして、再び創作活動に入る。
このサイクルを1999年のファーストアルバム「STILLING,STILL DREAMING」から20年近く続けているわけです。TV番組には出ず、フジロックには出るといったこの塩梅。「音楽活動」という言葉が最も似合うグループです。日本語の持つ意味・響き、日本で育ってきたヒップホップを感じたい人に是非聴いて頂きたい。
そして、そのブルーハーブのライブを地元奈良で観ることができました!!
(転用元:https://fnmnl.tv/2019/06/01/74244)
ブルーハーブは「北の本物」!!
ILL-BOSSTINO(イル・ボスティーノ)
まずブルーハーブの凄さを語るうえで避けて通れないのが、MCであるILL-BOSSTINO(イル・ボスティーノ)(初期はBOSS THE MC(ボス・ザ・エムシー))!!刃渡り180㎝のこの男が放つ言葉に今も昔もヒップホップヘッズはぐラングランに効いているわけです。
初期の頃は、静かに激しいラップスタイルでした。この頃のヒップホップシーンの中心は東京、それに対するアンチテーゼを掲げたのが他ならぬブルーハーブだったわけです。今みたいに自分が住んでいる地元をレップするのもここら辺からなのかなとも思いつつ。ブルーハーブは札幌出身で、BOSS自身自分たちのことを「北の本物」と称しています。
ちなみに、 R指定曰く梅田サイファーのKZが昔彼女とのドライブ中に、ブルーハーブのファーストをかけていたそう。ブルーハーブを聴いていた彼女さんがふと、「この人何でこんなに怒っているの?」と言ったそうです。笑
以下記事でも魅力は紹介しています!
O.N.O (オー・エヌ・オー)
日本きってのビートメイカー。O.N.Oが作るビートが無ければブルーハーブはここまで来なかったと言っても過言じゃない。あまり奇をてらった感じは無く、基本は上質なシンプルと言ったイメージ。
ちなみに、ZORNの名曲「かんおけ」のビートもO.N.Oが手がけたと言うから驚き!ZORNはかねてより、ブルーハーブのファンを公言しています。というか中堅どころ(30歳前後)のラッパーでブルーハーブの影響を受けていない奴は逆にいるのか?笑
(転用元:https://hiphop.abematimes.com/posts/4373968/)
リリックもヤバいし、ビートも不穏で最高にクール。これがO.N.O作と聞いた時はなるほどと。
www.youtube.com
ちなみに、KOK2019の決勝戦はAuthority vs RAWAXXX(優勝はRAWAXXX)で、その時のオリジナルビートがO.N.O!!「ビートはO.N.O!」とMASTERが宣言した時、テンションあがりまくりでした。
RAWAXXXは「ブルーハーブのビートなら取りこぼすわけにはいかねぇ」ってなことをラップし、さらに燃える!
あとは、DJ DYEさん!!
この方は後で触れます、ライブDJでこの人がいないとブルーハーブのライブは始まらない!!
「Rの異常な愛情」にて
2019年に発売されたR指定の著書「Rの異常な愛情」。これは過去R指定が行った日本語ラップの魅力を語ったイベントを文字起こしして注釈などを付与したもの。
この本の構成としては、こんな感じ。
- R指定の日本語ラップとの出会い
- 餓鬼レンジャーの魅力
- 漢a.k.a.GAMI、SHINGO☆西成の魅力
- 般若の魅力
- THA BLUE HARBの魅力
- RHYMESTERの魅力
- Mummy-Dとの対談(巻末)
まじでポケモンのオーキド博士ってくらい日本語ラップを知っている。。。年季の差もあれど、このレベルまで到達するのはかなり厳しそう。(笑)最強のバトルMCでメジャーレーベルアーティストであるよりも遥かに前に、まずハードコアな1リスナーであったと。
日本語ラップ好きなら一度は目を通してほしい本です。特にライムスターのMummy-Dとの対談は必見。僕もライムスターは本当に好きで、人生のBGMと思っているくらい。
そして、その中でR指定が語るブルーハーブのスゴさをいくつかピックアップしました。ブルーハーブは初期作品は恐ろしくクオリティが高いけれど、最近の日本語ラップをメインに聴いている人からすると、聴きづらく感じる点もあるだろうというのは否めません。聴く前に、R指定の解説を読んでから聴くと、聴くポイントが分かるかも!
BOSSさんみたいな語り口調に近い畳み掛ける言葉の中に無数に印がちりばめられているスタイルのラップが最初は理解できなかったんですよね
ボスさんはラッパーの中で1番真面目にいわゆるラッパー前とした活動を大切にしてると思うんですね
アルバム作ってライブやってって言うアーティスト活動以外は特別なことをしないって言うそれだけでこれだけキャリアを更新し続けるっていうのは本当に凄まじいことだと思いますね
ブルーハーブを聞く時はまず1人になって部屋を締め切ってCDをセットして歌詞カード開いて正座して聞くそれぐらいの姿勢で向き合わないと理解するのが難しい
うわ、スゴい分かる。音楽でも本でも何でもインスタントで分からないものにこそ噛み砕き甲斐があるというかね。
奈良の「EVANS CASTLE HALL」
そして、今回のライブ。ブルーハーブがメインの音楽イベント。16:00スタートから22:00終了までの長丁場。あがるぜ。しかし、これを観た時に疑問に思ったのが、「EVANS CASTLE HALLってどこだ?」
公式HPを観てみました。すると、何と設立されたのが2019年秋!!めっちゃ最近だ!!これは嬉しい、奈良って歴史はあるのですが、サブカルチャーにあまり開けていないというか。
大学生の授業の時に習ったのですが、47都道府県のうち県庁所在地に映画館が無い唯一の県が奈良県なのだとか。なんてことだ・・・そう考えると、奈良駅付近に音楽イベントができる場所ができたのは本当に喜ぶべきことです。
外観もかなりおしゃれ、どことなくヨーロッパを彷彿とさせますね。正面がこんな感じ。
まずはおしゃれな飲食店が左右に並び、奥に抜けるとライブハウスです。サソリがいる、おれサソリ座なんだよなぁ。。
中には王座が!!写真スポットなのかな。
ライブハウスはこの様に、なかなか洒落た外見でした。内装もキレイ、たぶん今まで見たライブハウスの中のトイレで一番清潔だったかも。
16時オープンで、早めにスタンバイ。結局20分程度おしてのスタート、ドアの前で待つ、寒い。その間連れと話していました、僕は扉に背を向ける形で。セットリストもこの間に確認しておく。
すると中から出てくる人が僕の体をかすめていきました。何んとなしにちらっと見ると、、、、まさかのILL-BOSSTINO!!!口を開けている間に通り過ぎていきました。ミスった、出遅れた、いつもの様にCDを持ってきたというのに。
そう、今回の僕の裏目標はファーストアルバム「STILLING,STILL DREAMING」にサインをもらうこと。経験上ワンマンライブではサインをもらうのはほぼ不可能。しかし、複数アーティストが出るイベントなら頑張れば結構もらえたりするのです。
そんなこんなで入場、コインロッカーに荷物を預け、ドリチケでモンスターと交換。さぁ始まりました、長丁場、6時間耐久ライブです!(笑)しかも、お目当ては基本的に最後。一番乗りで会場入り、最前列・ど真ん中を陣取ります、このままブルーハーブまで行くぜ。。。。
構成としては、DJタイムが多めで、Age Factory、LOSTAGEという2バンドがライブ。どちらも奈良出身のバンドです、奈良では「Age」という単語が流行っているのかも。(笑)
しかし、どちらも初めて聞きましたがかっこよかった。Age Factoryはパンク、LOSTAGEはオルタナという感じ。特にLOSTAGEは全曲クオリティが高い、僕のこよなく愛するRadioheadと被る音楽性、いやー好きです。地元にこんなにかっこいいバンドがいるとは。。。。
LOSTAGEのボーカルの五味さん(ヒップホップでゴミと言えば、また変わってくるのですが笑)がMCの際に、以前もブルーハーブと対バンしたと言っていました。その際に、いかにもヒップホップしか聴いていなさそうな人に「めっちゃかっこよかったです!」と言われたのが印象的だったとのこと。そう考えると、音楽の垣根を超えたイベントは新たな発見ができる場なのだなと実感。まぁ、でも僕はもともとロック畑出身なので!笑
そして茂千代、関西アングラの重鎮です。ラップもそうですが、ビートが太い。昔ながらのヒップホップをしている人が流行り関係なくオーバーサイズの服を着るのはやはりかっこいいですね、しかし。実は日本語ラップにおいて重要な年というのがありまして。それは1978年。この年は本当にすごいラッパーが多く生まれている、般若、漢a.k.a.GAMI、ERONE、TOKONA-X、オジロザウルスのマッチョ、AK-69、D.Oなどなど。そしてこの茂千代も1978年生まれのゴールデン世代なのです。当たり年――!!!
そしてSHINGO☆西成のライブ。やはりライブ慣れと言うか、客のアゲ方を知っていますね。曲は基本的に最新アルバム「白目」から。
今までSHINGO☆西成のライブは3,4回観たのかな。DJ FUKUのライブとか昭和レコードとかで。ZORNのライブでも客演できていました。毎回観ると胸の奥がアツくなります。ちなみに、今回のMCでのパンチラインは「フリースタイルバトルしてる暇あったら、西成の道端のおっさんと15分しゃべるわ!」。生き様ですぎやん。。
ブルーハーブとご対面
そして、待っていました!ブルーハーブのライブです。イベントは押していて、すでにこの時点で21時40分。まずは、ライブのDJ DYEが入場、僕の好きな芸人ラーメンズと似た空気感。天才タイプっぽいですね。
そして、ILL-BOSSTINOが入場!!もはや客は誰も騒がず、固唾を吞むのみ。。。オーラがあるぜ。。。
結論から言うと、僕はライブ中もその他でも一枚もブルーハーブの写真を撮っていません。何故か、最前列で観れたから。ライブ中何度も目が合ったから、そうなるとスクリーン越しに見るのは失礼でしょう!!
曲の構成は基本的に最新アルバム「THA BLUE HARB」から。驚いたのが声の通りが良い、やはりブルーハーブはライブアーティストなのだと実感。おそらく生で見ないと伝わらない空気感が確実にありました。
表現は難しいのですが、おそらくBOSSは日本語と言うツールを最も上手く使っている人類の一人なんじゃないかと。「人間はいつか死ぬ」レベルの当たり前のこともBOSSの口から出ると、かなり考え込まされてしまうんですよマジで。
そして、MCも圧巻。喋りが上手いというよりも、すでに話してる事がライブの延長の様な感じです、独特のリズム感で恐ろしく心を揺さぶることを言う。例えが適切か分かりませんが、矢沢永吉の様な独自の美学、圧倒的カリスマ性。
取り返しのつかない事が増えていく
それが折り返しの人生だ
こんなんもうライミングやん!!(笑)
あと個人的に好きだったのが、MCで次の曲に移る前に言った一言。
北の本物は、言い訳や、負け惜しみを堪えてやるべきことをやるんだよ
うおおおおお、これはファーストアルバム「STILLING,STILL DREAMING」の曲「孤憤」のリリックではないか。。。。た、たまらねぇ。。。ていうか、「孤憤」について結構この記事で書いたし。
ライブは終始ハイテンション、客は熱狂。夢か現実か分からなくなるそんな瞬間でした。ライブの終わりに僕ら観客に向けて言った一言もまた胸に残る。
あなたは僕のことを知っている。
僕がどんな人間かこの夜で知ってくれた。
会ったこともない音楽評論家よりも僕を知ってくれたんだ。
なんじゃこれ、泣きそう。。。。
そして大盛況のままライブは終わりました。場所は奈良駅で時間は22時40分、おそらく他県から来ている方もいるようで足早に帰宅。近所でしてくれていると終電を気にしなくてもいいのは嬉しい。そして、関係者入り口の前で待っていました。BOSSに会えるんじゃないかなって。
いや、でも難しいかな。うーん。そんな時、スタッフの方に声かけられました。
「ブルーハーブに会いたいの?」
「はい、CDにサインもらいたいんです。」
「あ〜、もう楽屋行っちゃったら??」
え、いいんすか・・・!?
そして、ドアを開け奥へ奥へ。するとありました、「THA BLUE HARB様」と書かれた部屋a.k.a.楽屋が!!!覗くとまさにILL-BOSSTINOが着替えている所でした。目が合うと一言、「最前列で見てくれていたね、ありがとう!」や、やべぇ!!!!
恐る恐るCDを渡しました。。。サインを書いて頂き、少し会話。
「MCで北の本物は〜って孤憤のリリック言ってましたね。」
「ははは、ありがとね!」
そして、最後は握手して解散。写真は撮りませんでした、何故ならBOSSは一人の男として会話して接してくれたから、だったら写真なんて不要やん。男同士じゃねぇか。
「また、奈良に来て下さいね!」
「こちらこそ!今日は来てくれてありがとう!」
どうですか、この爽やかな会やり取り!!!(笑)
DJ DYEさんも気さくな方でサインいただきました。ちなみに、このCD右上に少しスペースが。この日はILL-BOSSTINOとDJ DYEの2名。BOSSに言われました。
「右上にはいつか会ってO.N.Oからサインを貰いな!」
うおおおお、死ねない!!!
西の本物も言い訳や、負け惜しみを堪えてやるべきことをやっていきます!!
ではでは!